1か月以上前のこと。
住宅街のほの暗い夜道をトボトボ歩いて帰っていたら、家の軒下に猫がいた。その家は交差点の一角にあり、周囲には大きな鉢植えの植物がたくさん置いてある。その妙な茂みとなった鉢植えの合間で、街灯で時々ちらちらと姿を見せながら小走りの猫がかわいくてかっこいい。小さな忍者だな。

とっさに「ニャアー」「ウニャー」と呼びかけてみたが、のどの調子が悪くて小さなかすれ声しか出なかった。猫は振り向きもせずさっさと走り去った。姿を探しながら歩いて家の角を曲がる。もうどこにも見当たらない。
一人になった僕は、鉢植えの根元を見ながら、なんで声が出なかったんだろうと、ニャーニャーとまた練習しながら歩いた。

はっと目を上げると、少し前に人がいてこちらへ向かって歩いている。スーパーの街灯が向こうにあるので黒いシルエットしか見えないが女性みたいだ。
ヤバイッ、猫まねが聞かれなかったかな。向こうからこっちの顔は見えているのかな? 突然恥ずかしくなった僕は下を向いたまま、やっぱりトボトボと歩いてすれ違った。
そんなに聞こえるほど声は出てないはずだ、うん。安心しろ大丈夫だ、たぶん。たぶん。静かな夜道だけど?


そのお家は、周囲にたくさん鉢植え並べてあるんだけれど、どうも勝手に路肩を私用しているとしか思えない。これはたぶん道交法違反じゃないのかな。
でもそこでは最近はガクアジサイがたくさん咲き始めてかわいく、楽しみである。小さなつぼみが少しずつ育って大きくなった。今日も見たけれど、よりきれいになっていた。雨がふって青い花弁が映え、葉っぱも生き生きしてみえる。そばでは小さな枇杷の実もいくつかできている。
真夏は熱い道端で照り返しも受けるし、水が足りなくて葉が枯れていることもある。路肩の鉢植えではよく世話してあげないと、夏は辛そうだ。